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概要
狭義の鉄道は、 平行して設置された二本の鉄製のレール(軌条)が案内路となり、鉄製の車輪が鉄製レール上を回転するものである。英語ではrailroadまたはrailwayといい、案内路の材質を問わないが、ドイツ語・フランス語・中国語をはじめ多くの言語で「鉄の道(路)」という表現をするように、狭義の鉄道が鉄道の原初形態である。この形態は、鉄道事業法に基く国土交通省令である鉄道事業法施行規則において 普通鉄道と分類され、 新幹線、地下鉄等を含む多くの鉄道がこの形態である。また、英語でtramwayと呼ばれる路面電車も同じ形態であるが、日本の法律では軌道法 により管轄され、鉄道ではなく軌道と区分される。
広義の鉄道は、懸垂式・跨座式のモノレール、案内軌条式の新交通システム、鋼索鉄道(ケーブルカー)、浮上式鉄道を含み、いずれも鉄道事業法の許可または軌道法の特許を得て敷設される。 トロリーバス(無軌条電車)は、架線が張られたルートを集電装置(トロリー)により集電した電気を動力として走行するバスであるが、鉄道事業法に基づく鉄道である(軌道法においては、「軌道に準ずるもの」として扱われる)。またロープウェイも鉄道事業法の対象であるが、索道という扱いで鉄道と区別される。
なお、国土交通省令である「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」第120条により、懸垂式・跨座式鉄道、案内軌条式鉄道、無軌条電車、鋼索鉄道、浮上式鉄道その他特殊な構造を有する鉄道は、一括して特殊鉄道と定義されている。
鉄道の特徴
利点
1. 大量輸送
特に普通鉄道においては、専用の鉄軌道上で案内されて運転される特性を活かし、多数の車両を連結して一括運転できる。このため一度に大量の旅客や貨物を運送できる。特に19世紀から20世紀にかけては産業だけでなく軍事上の観点からも各国が積極的に鉄道を敷設した(→モルトケ)。
2. エネルギー効率が良い
鉄輪・鉄軌道の組み合わせは摩擦力による走行抵抗が少ない。平坦な線路を20km/hで走行した場合の走行抵抗は1〜2kgf/tと、ゴムタイヤを使用した自動車の10kgf/t(舗装道路)にくらべ1桁少ない。また、電動車では外部から電気エネルギーを供給するため、運送量あたりの所要出力はトラックの1/15程度である。
3. 安全性が高い
事故の発生率・被害者数とも自動車事故にくらべ少ない。鉄道事故の多くは踏切事故および駅ホームにおける人身事故である。
4. 定時運行性に優れる
鉄道は、専用軌道を走行しない軌道(路面電車)などのような例外を除けば、基本的に専用の走行路を使用するので、定時運行を確保しやすい。厳密な時間管理を要求する文化圏(日本など)においては定時運行の需要は大きい。もっともそうでない文化圏においては定時運行性に優れない場合がある。
5. 環境への負荷が少ない
前記(2)に関連して、移動単位(人や物、距離、重量など)あたりの使用するエネルギーが少ない(エネルギー効率が高い)ため、排出される二酸化炭素や窒素酸化物などの有害物質が少ない。また、電化鉄道では発電の材料を問わないため、新エネルギー(クリーンエネルギー)の切り替えも可能である。さらに、騒音対策にかかる費用も、自動車に必要なそれよりはるかに安い。
欠点
1. 採算ポイントが高い
線路・駅などのインフラに対する投資コストが大きく固定費率が大きいため、損益分岐点が高い。すなわち、採算がとれるには、ある程度以上の輸送量を必要とする。このため、利用者数が減少したローカル線では採算がとれず、路線廃止問題が発生する。これの解決案の一つとして線路と道路の上の両方を走らせることができるDMVが大変注目を浴びており、早ければ2006年度内に実用化の予定である。
2. 停止までの走行距離が長い
走行抵抗が少ない利点の反面、摩擦力に依存するブレーキ力も低いため、ブレーキをかけ始めてから停止するまでの距離(制動距離)を長く必要とする。このため閉塞管理をはじめとする安全運行設備が必須である。また踏切を有する在来線では、高速運転の上限が車両の動力性能ではなく、制動距離で制約を受ける場合が多い。また、同じ理由により、自動車ほどの加速を得ることもできず、自動車ほどの急勾配を上り下りすることもできない(勾配の問題は、ラックレール等を用いることで解決できる場合もある)。
3. 踏切による周辺交通の遮断
道路と平面交差する部分に設けられる踏切は、鉄道側に通行優先権があるので、踏切に於いては道路交通を一方的に遮断することとなる。制動距離との関連で、列車が通行するかなり前から道路交通を遮断するので、列車運行本数が多い踏切では交差する交通を長時間遮断することとなる。甚だしい場合には、鉄道路線により地域コミュニティーまでも分断しかねない。このため主に鉄道を高架化したり、地下化したりする方法によって立体交差に切り替えて「開かずの踏切」を解消する事業が各地で進められている。
4. 障害発生時の波及性
一部の路線・車両の事故や故障が路線全体、あるいはその路線に関連する他の路線に影響を及ぼすことがある。
5. 軌間、建築限界、電気方式などで制限を受ける。
異なる軌間の区間に乗り入れることは、困難である。
※軌間を切り替える手法としては、スペインの「タルゴ」で特殊な設備を用いて乗客を乗せたまま自国の1668mmと周辺他国の1435mmを切り替える方法が実用化されているほか、貨物列車では境界駅で台車を交換する方法もヨーロッパの一部で行われているが、いずれも多くの設備と手間を要し、一度に多数の列車を直通させることができない。
※日本では乗客を乗せたまま軌間切り替え可能なフリーゲージトレインの実用化試験が行われている。
建築限界や車両限界が路線によって異なれば、乗り入れの障害となる(例としては車両限界の大きい新幹線と車両限界の小さい在来線を改軌した区間を直通するミニ新幹線のように、在来線の車両サイズで作らざるを得なくなる)。
電気方式が区間によって異なる(直流・交流)場合には、直通するためには製作コストの高い双方の電気方式に対応した車両を使用するか、機関車を付け替えるなどの必要が生じる。
電気方式が同じでも、電圧が区間によって異なる場合は、複電圧方式の車両が必要となる。
鉄道の影響
20世紀の初めには未来派によって先端技術、力、速度の象徴のように扱われたが、20世紀後半には一部の蒸気機関車が懐古趣味の対象となるなど、鉄道は先進国では社会に浸透し、人々の生活の一部にもなった。
現在の鉄道の状況については、交通の鉄道の項目を参照のこと。
日本の鉄道
世界の鉄道一覧
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