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ここに掲載の写真は一部のみです。ご希望のジャンル、絵柄などございましたらお問い合わせください

生物としてのキノコ

一般にキノコと呼ばれるものの多くは担子菌門か子嚢菌門に属する。しかし変形菌などの、かつて菌界に分類されていたが、現在は菌類以外に分類されている生物の子実体もキノコとして取り扱われる場合がある。
子実体は胞子を散布するための器官であって、通常は「キノコ」の本体ではなく、その役割から言えばむしろ植物でいう花に近い(ただし子実体と花が互いに相同な器官というわけではない)。いわゆるキノコの生物としての本体は基質中に広がっている菌糸体である。
英語では食用になるキノコを mushroom、食用にならないキノコ、とくに毒キノコを toadstool というが、mushroom という語はいわゆる「キノコ」全体を指す場合にも用いられる(もちろんいわゆる「マッシュルーム(ツクリタケ)」単独を指す語も mushroom である)。
生育場所
キノコの多くは植物やその遺骸を基質としているが、中には動物の糞などの排泄物や死骸を基質とするものや、他種のキノコを基質にするものもある。また、植物の根と菌根と呼ばれる器官を形成して共生し、植物から同化産物を供給されて成育するものもある。通常目にするキノコの多くは地上に発生しているが、トリュフのように完全に地下に埋没した状態で発生するもの(地下性菌)もある。地域としては森林や草原に発生するものが多い。

一般にキノコは日陰や湿ったところに生えると言われ、実際にそういうところで眼にする場合が多い。しかし、キノコの側からすれば、これはやや異なる。というのは、地下性のものを除けば、キノコの形成には光が必要な場合が多いのである。これは、キノコが胞子を外界に飛ばすためのしくみであることを考えれば当然と言える。朽ち木の中の閉じた空洞にキノコを作っても仕方がないので、外に開かれた場所にキノコを作る必要がある。つまり、キノコの菌糸の生育できる場所が湿ったところが多いので、その中で明るいところに出てきてキノコを作っても、やっぱりくらい湿ったところに成らざるを得ない、というのが本当のところである。暗いところでできたキノコは、食用のエノキタケのように、モヤシのようにしか育たない。
形態と構造
キノコの形態は多様である。シイタケなどのように、傘や柄のある、いかにもキノコらしい形態をしたものだけでなく、サルノコシカケ類などのように柄のないもの、ホコリタケ類やトリュフなどのように球形に近いもの、コウヤクタケ科のキノコなどのようにほとんど不定形のものまである。また、腹菌類に属するキノコには、奇抜な形のものが多い。キクラゲなどのキノコは寒天か膠のような質感のキノコなので、まとめて膠質菌(Jelly fungi)といわれることある。
当然ながらキノコを形成しているのは菌類の細胞であるが、菌糸と呼ばれる通常の細胞だけではなく、ベニタケ科の多くに見られる類球形の細胞など、平常の菌糸体には見られない独特の形態を持つ細胞を含むことが多い。
キノコの部分名称
傘(かさ)
襞(ひだ)
管孔(かんこう)
柄(え) (「あし」ということもある)
鍔(つば)
壺(つぼ)
石突き(いしつき)
グレバ
顕微鏡での観察
担子器(たんしき)
クランプ
シスチジア
胞子(ほうし) (胞子紋による観察もある)
機能
菌類にとってのキノコの意義は、既に述べたように胞子の散布にある。多くのキノコでは、空中に胞子を飛ばし、風による散布を行なっている。しかし中には、特異な匂いなどによって昆虫などの動物を誘引して胞子の散布を行なっていると考えられているものもある。
食物としてのキノコ


食用キノコの例
シイタケ、エノキタケ、シメジ類、マイタケ、ナメコ、ツクリタケのように、非常によく食べられており、栽培も行なわれている食用キノコがある。最近では、エリンギやヤマブシタケの栽培も増えている。また、マツタケのように、栽培には成功していないが、大量に輸入されていたり、トリュフのように高価で珍重されるキノコもある。キヌガサタケは高級な中国料理の材料として扱われていたが、すでに中国で栽培されている。食用となるキノコの一覧は後の「種類」を参照のこと。
食用キノコにはビタミンB2やビタミンDを含むものが多い。また、シイタケには呈味性ヌクレオチドであるグアニル酸が含まれ、だしを取るのに利用されている。
またアガリクスなどのキノコが、β-グルカンなどを豊富に含む健康食品として販売されている。ただし、これらキノコの薬理作用については、その有効成分などを含めて不明な点が多い。健康食品として販売されるキノコ加工品の中には、癌などの難治性疾患が治るという宣伝文句が付けられている場合があるが、医学的にその有効性が立証されているものは未だなく、かつ医薬品として登録されていないものの薬効をうたうことは薬事法違反となる。
食用キノコ製造業
ホクト
雪国まいたけ
毒キノコ
さまざまなキノコが食用となる一方で、毒キノコも数多く存在する。中には致命的な毒を持つものもある。
毒キノコの毒の成分にはアマトキシン類、ムスカリン、イボテン酸、コプリン、イルジンなどがある。
毒キノコによる中毒の症状は様々である。摂取すると、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、昏睡などの症状を生じ、最悪の場合死に至る。長期にわたる体の麻痺を生じるようなキノコもある。変ったところでは、アルコールと一緒に食べると中毒を引き起こすものもある。
毒キノコの中には食用キノコと非常によく似たものがある。また、いくら毒性が弱くても体調によっては深刻な症状となることもある(ツキヨタケのような、比較的弱い毒キノコでも中毒死した例はある)。困ったことには、自然界には食毒の不明なキノコが多数存在し、さらに、一般には毒性がないとされる種であっても生育地域によっては毒性を持つ可能性がある。
キノコの同定の経験に乏しい人が野生のキノコを素人判断に基づいて食べるのは非常に危険である。食用キノコか否かを簡単な基準で見分ける方法は一切知られていない。いわゆる「縦に割けるキノコは食べられる」「毒キノコは色が派手で地味な色で匂いの良いキノコは食べられる」「銀のスプーンが変色しなければ食べられる」「虫が食べているキノコは人間も食べられる」「ナスと一緒に食べれば中毒しない」といった見分け方は何の根拠もない迷信であり、絶対それらの基準で判断してはいけない。これらのよく知られた俗説が全国区の権威あるものとして広まった背景としては、明治初期の官報に、一部で流布していた俗説を真実であると誤認し、掲載してしまったためであると言われている。
食用か毒かを判断するには、そのキノコの種、さらにはどの地域個体群に属するかまでの同定結果に基づくべきである。また、キノコによる中毒の多くは、既に毒であることが知られたキノコによるものであることをよく考えるべきであろう。
キノコ狩り

日本では、主に秋のキノコ採集シーズンにおいて、各地域のキノコ愛好家団体による同定会が開催されてている。公立試験研究機関や大学のキノコ関連の研究室が開催している場合もある。同定会に参加すれば、判定するための試薬や顕微鏡といった資材が利用できる上、複数の経験者により的確な判断が得られることなど、安全さと正確さを確保することができる上、自分で採集したキノコ以外を観察することもできるので、単なる食・ の判断にとどまらずキノコ全般や現地の自然環境についての知識を養うことができる。
同定会の前に採集会がセットされているのが通例で、団体で行動することにより山中でのトラブルを避けることができる。山中のトラブルといえば転落事故や熊・イノシシによる攻撃をイメージしがちだが、もっと注意すべきなのは他人の私有地の中に踏み込みそこでキノコを採取したことによる財産権の問題である。特に商品価値の高いマツタケが生育する場所では、マツタケの採取権と土地の所有権とが別に管理されている場合もあり、特に注意しなければならない。
採集会に参加する際は、指導者からの指示をよく守るべきである。特に狭い地域に多人数が押し寄せてキノコを探し回り踏み荒らすと発生環境が乱され、キノコの発生が減少するにとどまらず、そこの生態系に強い損害を与える危険性がある。
キノコを収穫するだけでなく菌糸体そのものに傷を付けたり好適な基物を破壊したりすると、来シーズンの収穫見込みが減るだけではなく、その区域の自然の多様性を損なうおそれもある。友人のため、家族のためという名目で何でもかんでも引っこ抜いて行くというのは慎むべきである。逆に食用きのこの胞子をまいて増やそうとする行為も稀に見受けられる。効果が疑問であり明確に有害だとは言えないが、自然のバランスを乱す行為には違いない。また、人間にとって危険かつ無用な毒キノコだからといって「討伐」するような行為は、何ら益のない単なる自然破壊に過ぎない。
不幸にしてキノコによる中毒が疑われる状態になった場合には、食べたものを吐かせ、直ちに医師の診察を受けなければならない。その際には、食べたキノコの残りがあれば持っていった方がよい。どのようなキノコによる中毒かがわかった方が適切な治療がしやすいからである。調理したものの残りや吐いたものの中にも手がかりがある場合がある。キノコの種類によっては、摂取から発症までに数日を要するものもある。したがって、医師の診察を受ける際には「4日前に山で採集したキノコを食べた」というようなことを伝えることで救命率が改善されると見られる。
比較的古い(昭和中期)資料では、日本国内でも採れる毒キノコである「ベニテングタケ」を猛毒あるいは致死性の高い毒キノコと表記しているものがあった。ベニテングタケは他のキノコ(食用も毒も含めて)に比べて圧倒的に目立ちやすく、誤食した場合の症状が幻覚性であること、長野県のごく一部にて特別な方法を用いて食用とされる事例が存在することを勘案し、あえて毒性を強く書くことにより事故を予防したものと見られる。ただし、それによってキノコの色彩の派手さこそが毒性の強さの指標となるような誤った認識を助長し、地味な色彩の毒キノコへの警戒心を弱めてしまった側面は否めない。猛毒キノコには地味なものも派手なものもあるが、中毒者数から見た日本の代表的な毒キノコはツキヨタケであり、色彩は地味である。
こうした経緯もあり、最近の植物図鑑やキノコ類の資料においてはこのような記述はなく、「毒キノコの中では比較的毒性が弱い」というような科学的に正確な記述に置き換わっている。当然ながら、弱い毒性であれ人体に有害なのは事実である。幻覚を求めて誤食するようなことは生死に関わる問題である。ベニテングタケの主要な毒成分であるイボテン酸は神経伝達物質のアナログであり、脳の神経細胞を異常に興奮させることで不可逆的なダメージを与える可能性がある。民族学的にはベニテングタケなどの幻覚性キノコをシャーマニズムの幻覚剤などとして用いる事例が知られているが、こうした文化は伝統的に健康上、精神医学上のデメリットを最小限にするような慎重な使用法の経験の蓄積の上に成り立っていることを忘れてはならない。同様に幻覚性のあるシロシビン含有きのこをマジックマッシュルームとして摂取し幻覚作用を楽しむ風潮もあったが、現在は法律で禁止されている。


The above explanation comes from 出典: フリー百科事典"ウィキペディア"

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