商品コード; d_mala_s00, マラリアカ, フロント(片面のみ
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D-mala-s00; malarial mosq.,
マラリアカ, front, フロント(片面のみ)
病原体はプラスモジウム(Plasmodium)属に属する単細胞の原虫。主にハマダラカ(Anopheles sp.)によって媒介される。
マラリア原虫はアルベオラータ門 アピコンプレクサ類 胞子虫綱 コクシジウム目に属する。アルベオラータに属する原生生物には他に渦鞭毛藻類が知られ、近年マラリア原虫からも葉緑体の痕跡が発見された。そのため、その全てが寄生生物であるアピコンプレクサ類も祖先は渦鞭毛藻類と同じ光合成生物であったと考えられている。ヒトの病原体となるものは熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫の四種。まれにサルマラリア原虫に感染することもあるが、2006年8月現在で十数例しか報告がない。特に熱帯熱マラリア原虫によるマラリアは症状が重い。
マラリア原虫は脊椎動物で無性生殖を、昆虫で有性生殖を行う。したがって、ヒトは終宿主ではなく中間宿主である。ハマダラカで有性生殖を行なって増殖した原虫は、唾液腺に集まる性質を持つ。このため、この蚊に吸血される際に大量の原虫が体内に送り込まれることになる。
疫学
熱帯、亜熱帯地域の70ヶ国以上に分布している。全世界で年間3〜5億人、累計で約8億人の患者、100〜150万人の死者があると報告されている。もっとも影響が甚大な地域はサハラ砂漠以南のアフリカ諸国である。
予防
一次予防
ワクチンがない以上、マラリアの流行地に行く場合は蚊に刺されないようにすることが最重要事項である。殺虫剤や虫除けスプレーなどを使うほか、夜間は蚊帳を用いることも必要である。抗マラリア薬の予防投与も行われる。
二次予防
マラリア流行地域から帰国してから1〜2週間後に高熱が発生した場合はマラリアが疑われるため、熱が下がっても安心せず、直ちに病院を受診することが必要である。
三次予防
再発を防ぐため、投薬中止は自分で判断せず、必ず医師の判断を仰ぐ。
症状
マラリアを発症すると、40度近くの激しい高熱に襲われるが、比較的短時間で熱は下がる。しかし、三日熱マラリアの場合48時間おきに、四日熱マラリアの場合72時間おきに、繰り返し激しい高熱に襲われることになる。(これが三日熱、四日熱と呼ばれるゆえんである。)卵形マラリアは三日熱マラリアとほぼ同じで50時間おきに発熱する。熱帯熱マラリアの場合には周期性は薄い。
熱帯熱マラリア以外で見られる周期性は原虫が赤血球内で発育する時間が関係しており、たとえば三日熱マラリアでは48時間ごとに原虫が血中に出るために赤血球を破壊するため、それと同時に発熱が起こる。熱帯熱マラリアに周期性がないのは赤血球への多重感染を起こすためである。
いずれの場合も、一旦熱が下がることから油断しやすいが、すぐに治療を始めないとどんどん重篤な状態に陥ってしまう。一般的には、3度目の高熱を発症した時にはたいへん危険な状態にあるといわれている。
放置した場合、熱帯熱マラリア以外は慢性化する。慢性化すると発熱の間隔が延び、血中の原虫は減少する。
三日熱マラリアと卵形マラリアは一部の原虫が肝細胞内で休眠型となり、長期間潜伏する。この原虫は何らかの原因で分裂を再開し、再発の原因となる。
合併症
合併症は一般的に熱帯熱マラリアに起こる。
脳マラリア
原虫が寄生した赤血球が脳内の血管などの微細な血管に詰まり血流を阻害することにより発生する。意識低下、言語のもつれなどの神経症状が起こる。進行すると昏睡状態に陥り、死亡する。
黒水熱
急速な溶血により、ヘモグロビン尿、黄疸などが発症する。
その他の合併症
低血糖、肺水腫などが発症する可能性がある。また、妊婦が感染すると妊娠に影響を与え、また原虫が胎児に移行する可能性もある。
検査
ギムザ染色によってマラリア原虫は赤血球内に認められる。
末梢血ギムザ染色...ただし通常のpH6.5ではなく、ph7.2〜7.4のリン酸緩衝液を用いたほうが観察しやすい。
迅速診断キット
ICT Malaria P.f./P.v.(R)
OptiMAL(R)
PCR-MPH法(岡山大 綿矢ら)
赤血球の溶血にともないハプトグロビン値の低下が見られる。血小板数も低下する。
治療
マラリア原虫へのワクチンはないが、予防内服薬はいくつかある。近年は殺虫剤に耐性を持つハマダラカや、薬剤に耐性のあるマラリア原虫が現れていることが問題になっている。また地球温暖化による亜熱帯域の拡大とともにマラリアの分布域が広がることも指摘されている。
マラリアの治療薬としてはキニーネが知られている。他にはクロロキン、メフロキン、ファンシダール、プリマキン等がある。いずれも強い副作用が表れることがあり注意が必要。クロロキンは他の薬剤よりは副作用が少ないため、予防薬や治療の際最初に試す薬として使われることが多いが、クロロキンに耐性を示す原虫も存在する。通常は熱帯熱マラリア以外ではクロロキンとプリマキンを投与し、熱帯熱マラリアでは感染したと思われる地域での耐性マラリア多寡に基づいて治療を決定する。近年では、漢方薬を由来としたチンハオス系薬剤が副作用、薬剤耐性が少ないとされ、マラリア治療の第一選択薬として広く使用されている。治療の際、日本国内では認可されていない・販売されていない薬剤もあるのでオーファンドラッグについてのサイト[1]を参照すると良い。
梅毒のマラリア療法について
梅毒の病原体である梅毒トレポネーマは高熱に弱いため、梅毒患者を意図的にマラリアに感染させて高熱を出させ、体内の梅毒トレポネーマの死滅を確認した後キニーネを投与してマラリア原虫を死滅させるという療法がかつて行なわれていた。ただし、この療法は危険度が大きいため抗生物質が普及した現在では行なわれていない。