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オランダを中心に調速

（オランダのオルガン） 　「オルガンの国オランダ」という言い方がある様に、オランダはスペイン領だった15Ｃからオルガン製作の先進国として栄え、ドイツ、フランスに影響を与え、現代まで手工業的なオルガンの製作の伝統が息づいている。修復保存されている歴史的オルガンの数も、オルガン愛好家の数も随一。既に16Ｃ後半に、製作家としてニーホフ一族を、演奏家としてスウェーリンクという世界に誇る巨匠を生み出した。スウェーリンクの活躍した時代、ローマ・カトリックからカルヴァン派に転向したオランダの教会は、教義に反するとして、宗教会議でオルガンの使用禁止令が出された。同じく宗教改革をきっかけにオルガンを「悪魔の楽器」として教会から撤去してしまったイギリスとは違い、オルガン好きのオランダ人は、オルガン所有権を市に移し、市がオルガニストの雇用主となり、オルガン製作者も演奏家も活動の場を失わずにすんだ。 　　アムステルダム市専属オルガニストとしてのスウェーリンクの仕事は、市民のために教会で公開のオルガン演奏を行うことだった。市の立つ日などに、市民のためのオルガンコンサートを開く伝統はその後も長く続き、現在でもアルクマール、ハウダ等チーズ市が立つ日には、オルガンコンサートが開かれている。 　　歴史的オルガンとして紹介されるものは、オルガンケースのみ保存されているもの、オリジナルのケースに現代の製作者による本体が付けられたもの、修復が厳密でなく、当時の響きを保っていないもの、各時代の嗜好で改造を重ね手を加えていったものなど様々。いずれにしても楽器として、美術工芸品として、一種の建造物として残るオルガンの数は多い。オランダの黄金時代の17Ｃは、経済・文化の発展が目覚ましく、教会では伴奏にオルガンが再び使われるようになった。多くの製作者が各地に大規模なオルガンを造り、オルガンも黄金時代を迎えた。18Ｃに入っても壮麗なオルガンの製作は相次ぐ。中でも32フィートのペダルタワーを持つハールレムのミュラー作のオルガンは、オランダで最も素晴らしいオルガンの１つ。ハールレムでは、毎７月初めに国際オルガン即興演奏コンクール・サマーアカデミーが開かれる。テープ予選を通ったオルガニストによって競われる。その場でテーマと様式が指定され、20〜30分の長丁場で腕が試される。審査員の演奏会もあり、ヨーロッパ中のオルガンファンの注目を集める。サマーアカデミーは３週間に渡り、世界一流講師が指導にあたる。 　　18Ｃ後半から19Ｃには、音楽自体がロココ・クラシック・ロマン派へと移行し、オルガンもデザイン・響き共にこの流れに乗る。オランダの町にあるストリート・オルガンは、電動式大型のものは20Ｃ初めのものが多く、年に何度か大会も催される。個人宅でもキャビネットオルガンと呼ばれる小型オルガンを置く家が多い。